
レーザーによる頭皮ケアと聞くと、少し特別なものに感じるかもしれません。
一方で、低出力レーザー(LLLT:Low Level Laser Therapy)は、毛髪分野をはじめ、医療やリハビリ領域でも長年研究されてきたアプローチの一つです。
ドクター・ケラーの育毛カウンセラーへのご相談でも、「なぜ、レーザーを頭皮ケアに使用しているのか」というご質問をいただくことがあります。
本記事では、低出力レーザーの作用を論文ベースで整理しながら、頭皮や毛髪にどのように関わると考えられているのかを分かりやすく解説します。
低出力レーザー(LLLT)とは?
低出力レーザー(LLLT)は、皮膚を切ったり焼いたりするような強いレーザーとは異なり、低い出力の光を照射することで、細胞のエネルギー産生や環境に影響を与えることが研究されている技術です。
このようなレーザーは非侵襲(皮膚を傷つけない)であることが特徴で、身体への負担が少ないアプローチとして研究・活用されてきました。
毛髪分野においても、こうした特性から頭皮環境に関わるさまざまな作用が研究されています。
また海外では、低出力レーザーを用いた機器がFDA(アメリカ食品医薬品局)のクリアランスを取得している例もあり、いち早くホームケアとして活用されてます。
つまり低出力レーザーは、感覚的なケアではなく、研究に基づいた背景を持つ頭皮ケアアプローチの一つとして位置づけられています。
低出力レーザー(LLLT)は、なぜ毛髪分野で使われているのか
① 光の直進性と局所へのアプローチができる
レーザーの大きな特長の一つは、光が拡散せず、一定の方向にまっすぐ進む「直進性」を持つことです。
この性質により、広くぼんやり作用するのではなく、特定の部位にエネルギーを集中して届けることができるとされています。
② 非侵襲であること(負担の少なさ)
低出力レーザーは、皮膚を傷つけたり熱で変性させたりするものではなく、非侵襲(身体へのダメージが少ない)という特徴を持っています。
そのため、継続的なケアとして取り入れやすいアプローチとして研究されてきました。
③ 頭皮環境に関わる複数要因へのアプローチ
毛髪環境は、
- 血流
- 炎症
- 細胞の働き
といった複数の要因によって成り立っています。
低出力レーザーは、これらの要素に関与する可能性があることから、頭皮環境全体にアプローチする手段として研究されています。
低出力レーザー(LLLT)が注目される理由:5つの作用メカニズム
低出力レーザーは単一の作用ではなく、複数の要因に関与する可能性があると考えられています。ここでは、毛髪分野で研究されている主な作用について整理します。
① ミトコンドリアへの作用(ATP産生)
低出力レーザーは、細胞内のミトコンドリアに存在する酵素との関係が研究されており、エネルギー産生(ATP)に関与する可能性が示唆されています。
(Hamblin MR. Photobiomodulation. Photochem Photobiol, 2017)
② 一酸化窒素(NO)と血流への影響
低出力レーザー照射によって一酸化窒素(NO)の解離が起こる可能性が報告されており、これが血流環境に影響を与える可能性が示唆されています。
(Karu TI. Lasers Surg Med, 2008)
③ 炎症性サイトカインへの影響
低出力レーザーは、炎症に関わるサイトカイン(IL-1、TNF-αなど)に対して抑制的に働く可能性が報告されています。
(de Freitas LF, Hamblin MR. Lasers Med Sci, 2016)
④ 毛周期に関わるシグナルへの影響
低出力レーザーは、Wnt/βカテニン経路など、毛周期に関わるシグナルへの関与も研究されています。
(Avci P et al. Lasers Surg Med, 2014)
⑤ 成長期(アナゲン期)への影響
低出力レーザーが毛髪の成長期(アナゲン期)への移行に関与する可能性が示唆されています。
(Avci P et al. Low-level laser (light) therapy (LLLT) for treatment of hair loss)
このように低出力レーザーは、細胞のエネルギー、血流環境、炎症バランス、毛周期といった複数の要因に関与する可能性があると考えられています。
単一の働きではなく、頭皮環境全体に関係する複数の要素にアプローチする可能性がある点が、低出力レーザーが注目されている理由の一つです。
低出力レーザー(LLLT)の毛髪領域での研究・位置づけとは?
日本皮膚科学会での位置づけ
低出力レーザーは、日本皮膚科学会の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインにおいて、「行うよう勧める」治療の一つとして位置づけられています。
海外での活用(FDA)
アメリカでは、低出力レーザーを用いた機器がFDA(アメリカ食品医薬品局)のクリアランスを取得している例もあり、ホームケアとして活用されています。
このように、低出力レーザーの毛髪領域での位置づけは、単なる理論ではなく、基礎研究から臨床まで積み重ねられてきた技術です。
女性の薄毛と低出力レーザー(LLLT)の関係
女性の薄毛は、男性のように一つの原因で進行するケースとは異なり、複数の要因が重なって起こることが多いとされています。特に、ホルモンバランスの変化や生活環境の影響を受けやすい点が特徴です。
こうした背景から、女性の薄毛は「ホルモン」「血流」「炎症」といった複数の要素が関係する状態と考えられています。
一方、これまで見てきたように、低出力レーザーは、細胞のエネルギーや血流環境、炎症バランスといった複数の要因に関与する可能性が研究されています。
つまり、女性の薄毛と低出力レーザーは、どちらも「複数の要素が関係する」という共通点を持っている点が重要です。
更年期によるホルモンバランスの変化
40代以降では、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下し、毛髪環境にも影響を与えると考えられています。
エストロゲンは毛髪の成長期を維持する働きに関与しているため、その低下により、髪のボリュームやハリが失われやすくなります。
つまり、年齢とともに感じやすい髪の変化は、ホルモンバランスの乱れに加えて、血流や頭皮環境のコンディション低下とも関係している可能性があります。
産後に見られる一時的な抜け毛
出産後はホルモンバランスが大きく変動することで、毛髪の成長サイクルが乱れ、一時的に抜け毛が増えるケースがあります。
これは一定期間で落ち着くことが多いものの、その間は頭皮環境が不安定になりやすいため、日常的なケアの積み重ねが重要とされています。
ストレスや生活環境の影響
現代では、ストレスや生活習慣の影響も無視できません。慢性的なストレスは自律神経やホルモンバランスの乱れにつながり、結果として頭皮環境にも影響すると考えられています。
また、長時間のスマートフォン使用や姿勢の崩れによる首・肩のこわばりも、頭皮の血流環境の低下につながる要因の一つとされています。
つまり、日常の積み重ねによって、頭皮環境が徐々に乱れやすくなる可能性があるという点も重要です。
女性は選択できるアプローチが限られる場合もある
女性の薄毛は、男性と比べて使用できる治療や成分の選択肢が限られる場合があります。
例えば男性では、フィナステリド やデュタステリド といった内服薬が用いられることがありますが、女性ではホルモンへの影響などの観点から使用が制限されるケースがあります。
そのため女性の育毛ケアでは、外用剤に加え、頭皮環境そのものにアプローチする視点が重要とされています。
こうした背景から、血流や炎症、細胞環境といった複数の要素に関与する可能性がある低出力レーザは、女性のケアにおいても注目されているアプローチの一つです。
低出力レーザー(LLLT)で考える頭皮ケアのポイント
低出力レーザーは、
- 細胞のエネルギー(ミトコンドリア)
- 血流環境
- 炎症バランス
- 毛周期
といった、頭皮環境に関わる複数の要因に対して、関与する可能性が研究されている技術です。
毛髪分野においても、基礎研究から臨床研究まで積み重ねられており、日本皮膚科学会のガイドラインでも位置づけられているなど、研究に基づいた背景を持つアプローチの一つといえます。
また、女性の薄毛はホルモンバランスや血流、炎症など、複数の要因が重なって起こることが多いため、単一の対策だけでなく、頭皮環境全体を整える視点が重要とされています。
低出力レーザーは、こうした複合的な要因に対してアプローチする可能性があることから、その一つの選択肢として研究が進められている技術です。
ドクター・ケラーでは、こうした技術背景を踏まえ、頭皮ケアの一つのアプローチとしてレーザーを取り入れています。